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さて、今回も猫好き天皇のお話。

先日の宇田天皇以外にも、猫好きな天皇がいらっしゃいました。
平安時代に在位していた、一条天皇。
彼の猫に対する愛情の注ぎ方は尋常ではなかったといわれています。


なんと自分の猫に「五位」という位を与えていました。

「五位」という位は、天皇の住んでいる屋敷へ入ることを許されている位だそうです。
かなり高い地位を持っていました。猫なのに。

また、一条天皇の猫が子猫を産むと、出産後に祝宴を行いました。
この儀式は、本来は天皇の子どもが産まれた時にかなり盛大に行われるものです。
貢物や料理など、人間と同じく5日間きちんと行ったと記録にあるそうです。

さらに、子猫の飼育係には位の高い女官が任命されていました。



一方、天皇の奥さんは犬を飼っていたのですが
犬は猫とは異なり、位を与えられることも泣く、ずーっと外で飼われていました。


今回は、そんな
『命婦(みょうぶ)のおとど』という、天皇の飼っていた猫と
『翁丸(おきなまる)』という、天皇の奥さんの犬のお話。

原文は清少納言の「枕草子」第9段『うへにさぶらふ御猫は』 です。

昔の教科書だと、高校1年の古文の教科書に載っていましたが
今でも高校生はこの話を読むのでしょうか・・・


今回も、現代語訳をもう少し噛み砕いた日本語で書いていきます。
(古文は主語が1文の中であれこれ入れ替わるので、訳が非常に難しいのですが
なるべくわかりやすく書いてみました)
一条天皇に飼われている猫さま。
「命婦のおとど」という名前で、猫なのに位をもらっている。
とても可愛い猫なので、一条天皇は大切にしていらっしゃる。

ある日、猫さまが屋敷の軒先て寝ていた。
猫の飼育係がそれを見て
「あらあら猫さま。だめです。おうちに入りなさい」
と猫さまを呼んだのに、
猫さまは日当たりの良いところで昼寝をしているままだった。

飼育係は猫さまをちょっと脅かしてやろうと思い、
「翁丸(犬)!どこ? 猫さまにかみついてやりなさい」
と犬をけしかけた。

翁丸はアホだから、それを本気にして、猫さまに走りかかったので
猫さまはびっくりして、家の中に逃げ込んでしまった。


その頃天皇はちょうど朝食を食べていて、この様子を見ていた。
天皇は猫さまを懐に入れて、家来に
「翁丸ムカツクから、みんなで殴って追放してしまえ。今すぐにだ」
と命じたので、家来みんなで翁丸を責めた。
翁丸をけしかけた猫さまの飼育係も責められ、飼育係を解任されそうになってしまった。

一方、翁丸は屋敷から追放されてしまう。

かわいそうな翁丸。3月3日には頭に桃の花の飾りをつけられ可愛がられていたはずなのに。
天皇の奥さんが食事をしているときには、必ず近くに控えていたのに、もういない。


それから3~4日後の昼頃。
犬がひどく鳴く声がするので、どんな犬が鳴いているのかと思ったら、
犬を見に行った便所掃除係が走ってやってきて
「大変!翁丸を男が2人がかりで殴ってる。追放したのに戻ってきたみたい。
翁丸、このままだと死んじゃう」
と言うので、叩くのを止めに行かせようとしたら犬は鳴きやんだ。
どうやら死んでしまったので、屋敷の外に引きずり出して捨ててしまったらしい。


さらにその日の夕方頃、あちこちを酷く腫れあがらせたみすぼらしい犬が
プルプル震えて歩いていた。犬に声を掛けても返事をしない。

近くにいた人と「翁丸かなぁ」「違うでしょ」と話していると、
天皇の奥さんが「右近ならわかると思うから」と言って、右近を呼んできた。

右近は犬を見て、こう言う。
「翁丸に似てはいるけど、この犬は不気味だ。
翁丸なら名前を呼べば喜んでやってくるけど、こいつは呼んでも寄ってこない。だからたぶん違いますよ。
それに翁丸は叩き殺されたんですよね。2人に殴られたら、さすがに犬も生きてはいられないでしょう」


日が落ちて暗くなり、犬に食べ物を与えてみたけれど食べてくれないので
この日は、この犬は「翁丸ではない」という結論に達した。


翌朝、その犬は柱の下にいた。
それを見て私は
「昨日は翁丸をひどく殴ったんだよなぁ。かわいそうに。どんなに辛かっただろう」
と言うと、犬がそれをきいてぽろぽろと涙を流したからびっくりした。
やっぱり、この犬は翁丸だったのだ。

天皇の奥さんが翁丸に声を掛けると、犬はひれ伏して鳴いた。

このことを一条天皇に伝えると
「犬にもこのような心があるんだね」とおっしゃった。



その後、翁丸は許されて元のように飼われることになった。
人だと、人から同情されて泣いたりはするけれど、犬も同情されて鳴きだしたのはなんとも言えず面白く、
そしてかわいそうなことであった。

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この枕草子にあるように、一条天皇の猫への愛情は超越していたようです。
江戸時代の書物にも「一条院の猫」について面白おかしく書かれています。

天皇が猫を好んで飼うというのはこの先も続いていきます。

昔は明りが暗かったせいか、猫の眼の光り方や、
なでた時に出る静電気による身体の発光もなどから、
神秘的な生き物として寵愛されていたようです。

さらに天皇だけでなく、猫は武家の間でも他の動物とは一線を引かれた存在だったのです。

虎やライオンに通じる姿や、暗闇で光る眼光や、
優雅で我儘なそぶりに何か見えない力を感じる人が多かったのかもしれません。

それが、妖術を用いたり、尻尾が2つに割れて怪異として紹介されるのは、
ずーっと後のこと。

猫が「猫また」として登場する「徒然草」あたりから怪しくなってくるわけで。
それまでの猫は、平和そのものであったといえるでしょう。
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2014.03.29 Sat l 国語 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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